失われた白布温泉茅葺き旅館2軒、火災現場で立ち尽くす…

blog
2024/02/27

失われてしまった白布温泉茅葺き旅館2軒

あふれる風景~白布温泉(山形)2000年3月26日

重厚な茅葺き旅館の滝風呂(打たせ湯)に魅せられ何度も足を運んだ白布温泉が悲劇に見舞われた。2000年3月25日夕、火事が発生し「中屋」「東屋」の2旅館が全焼してしまった。

3月26日付の新聞各紙によると、読売「山形、かやぶきで人気、旅館2軒全焼=25日午後5時5分ごろ中屋(遠藤平右衛門さん経営)から出火、木造2階建て約1440平方メートルと、隣の旅館東屋(宍戸康裕さん経営)の木造2階建て約2980平方メートルを全焼した。出火当時、中屋には42人、東屋には53人の宿泊客がおり、全員が避難した。米沢消防署からポンプ車など38台が出動、火は午後9時10分に鎮火した。白布温泉は旅館や土産物店など約30軒が集まっており、全焼した2軒の旅館は江戸時代から残るかやぶき屋根の建物が人気を集めていた」。朝日「老舗旅館が全焼、米沢、宿泊客95人避難=25日午後5字5分ごろ、中屋(遠藤平右エ門社長)本館のひとつから出火し、木造2階建てかやぶき屋根の同館(延べ約2987平方メートル)が全焼、火は隣の東屋(宍戸惣左エ門社長)にも燃え移り、同じ造りの建物(延べ約2987平方メートル)が全焼した。また、西隣の旅館の壁が一部焼けた。米沢市消防本部などによると、出火当時、中屋と東屋には宿泊客計95人と従業員31人がいたが、近くの旅館などに避難して全員無事だった。中屋は約300年前に建てられた老舗の旅館だった。白布温泉は開湯700年といわれ、中屋と両隣の東屋と西屋はいずれもかやぶき屋根で入り母屋造りという古風な建物で知られていた。米沢市消防本部はポンプ車など8台を出動させ消火に当たった」

また、朝日新聞の雑感には「焼けた旅館がいずれも古いかやぶきだったことから火の回りが早かった。しかし、出火時間が食事前の午後5時すぎだったため、宿泊客や従業員に犠牲者を出さずに済んだ。夜中だったら間違いなくかなりの犠牲者が出ただろうと消防関係者は話している」とある。宿泊者のコメントとして「温泉を出た途端、変な臭いに気付いた。何だろうと思ったら煙が立ち込めてきた。すぐに洋服を着て家族と一緒に外に飛び出した」「2階奥の部屋に案内され温泉に入る用意をしていたとき、女性従業員の『避難してください』と叫ぶ声が聞えた。1階に降りたら煙が充満していたが、そのまま走って外へ飛び出した。外がまだ明るかったのでスムーズに逃げられた」とあった。

新聞を見た26日朝、居ても立ってもいられず白布温泉へと車を走らせた。思い入れたっぷり、何度も通った茅葺き旅館が燃えてしまっていた。雪深い風景に燃え残った黒々とした柱跡などが広がる…。西屋以外の茅葺きが無い。新聞記事は嘘じゃなかったんだ…。現場検証なのか、消防署員や消防団員らが慌ただしく動き回っている。喧騒の中で声も出ない。無残なモノクロのコントラストに、ただただ呆然と立ちすくむだけだった。

 


PAGE
TOP