重厚な白布温泉茅葺き3旅館、伝統を刻みながら激しく落ちる打たせ湯

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2024/02/23

重厚な白布温泉茅葺き3旅館、伝統を刻みながら激しく落ちる打たせ湯

あふれる風景~白布温泉(山形)1984年9月2日

西吾妻の北麓標高900メートルの白布温泉。昔は白布高湯といい、信夫高湯(吾妻高湯)、最上高湯(蔵王)とともに奥州三高湯と呼ばれた名湯。西吾妻スカイバレーに続く坂の途中に風格ある茅葺き屋根の旅館が構える。「東屋」「中屋」「西屋」の3軒。屋号を前面に出し、厳かで庶民を隔絶している感が漂う。3軒以外は飾り気のない温泉街、笹野一刀彫などを売るお土産店があり湯治場の雰囲気も。格式高そうな茅葺き旅館、どこから入浴しようか。初めて来たが今後再訪することは間違いない。迷った末に坂の下から順番に攻めていこうと決めた。

まず「東屋」。場違いの中に意を決して飛び込んだが、ちょうど湯の入れ替え中で無念の断念。緊張感を持ったまま次は真ん中に建つ「中屋」へ。迎えてくれた女将はとても親切な受け答え、東屋もそうだったが、伝統ある旅館は(しがない若者を相手にしても)対応に品がある。中庭を抜け裏山沿いの湯小屋へ。男女別浴で全体的に黒のイメージ。湯量豊富な打たせ3本、3メートル以上の高さからドバドバと流れ落ち石造りの湯船2槽に注がれる。打たせ湯は3本とも温度が違う。左側が一番熱い。打たせ湯の木の樋は裏山の源泉に繋がる。樋の通る壁の隙間から山の斜面の緑と陽が差し込み、湯の透明感を際立たせている。

以降、予想通り何度も通うことになる。3軒ともに湯小屋の造りはほとんど変わらない。湯滝が激しく落下し、こつこつと石を削り歴史を刻む。感動があふれる。

「西屋」は湯小屋前の渡り廊下にすのこが敷かれ、その下を湯船からあふれた湯が惜しみなく流れていく。廊下に面した湯小屋の壁は浴室内に湯気がこもらないように格子状になっているが、立ち止まって覗かない限り中は見えない構造になっている。シンプルすぎるいにしえの知恵が見え隠れ。

「東屋」の湯小屋はいつも混雑。その時は2階の石風呂へ。一枚岩をくり抜いた重厚な湯船なのに、何故か空いている。小さな黒い湯船に白い湯の花が浮遊し、こんこんと湯をたたえる。厳かに体を沈めると湯が石の表面を滑るように静かに流れていく。

心身に沁みていく歴史と伝統、3軒ともに素晴らしい。

 

 


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