つげ兄弟に触れる

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2020/12/31

2016年1月26、27日は濃密な2日間となった。憧れのつげ兄弟に触れてしまったのだ。つげ義春氏の「紅い花」「ねじ式」など、つげ忠男氏の「無頼平野」「ささくれた風景」などとの出会いは衝撃的だった。40年以上も追い続けることになるのだから。

2016年1月26日、つげ忠男原画展「懐かしのメロディ1969/2015」(開催2016年1月14日~26日、入場無料)を見に国立市のギャラリービブリオを訪れた。原画展チラシに、初期の傑作「懐かしのメロディ」の初出し(1969年ガロ)とリメイク(2015年)の生原稿を並列展示する前代未聞の原画展とある。国立駅に来るのはマイナーなプログレッシブ音楽の輸入盤探しに様々なレコード店回りをしていた大学時代以来だ。中央線の車窓に東京では珍しい住宅屋根などに雪の残る風景が流れていく。プログレに夢中になっていた自身の懐かしのメロディーを思い出した。

ビブリオは、ギャラリーというものの普通の一軒家だった。戸惑いながら玄関を開けると店主が出迎えてくれた。畳敷きの居間に額装された原画が所狭しと飾られていた。アンティークなレコードプレーヤーから田畑義夫の歌が流れている。開店直後だったせいか他に来場者はなかった。暖房もなく冷たく静かな空間で独特のペンタッチ、斜線表現をじっくり観賞。サイン入りの本2冊「釣り愉し、弁当旨し」「メイキング・オブ無頼平野」を購入した。

その翌日の1月27日、「つげ義春の旅へ。」資料展(開催2015年11月14日~2016年2月14日、入館無料)を見に天栄村ふるさと文化伝承館を訪れた。雪舞う中のドライブ、高台に建つ伝承館は公民館的な雰囲気、道路は除雪されているものの駐車場は10センチほど雪が積もったまま。轍もない。見学者はいないのだろう。資料展チラシに、つげをして「私の温泉好きはこのときに始まったと思える」と言わしめた岩瀬湯本・二岐温泉とある。「二岐渓谷」「桃源行」「探石行」「会津の釣り宿」などで描かれたカットと、そのモデルとなった現風景が比較展示されていた。義春氏が主催者に宛てた直筆のお礼を記した手紙などもあり大変興味深かった。1980年代に岩瀬湯本温泉共同浴場に入浴、二岐温泉の湯小屋旅館に宿泊しているファンの一人として大満足の展示会だった。

雪が彩りを添えてくれた2日間、つげ兄弟の芸術にはピリッとした冬の冷気が似合うと感じた。


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