源泉3種の不動湯温泉

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2020/07/15

あふれる風景~不動湯温泉(福島)1984年11月

土湯温泉から約4キロ山中に入った一軒宿。急斜面にしがみつくように建つ。可愛い犬が出迎えてくれた。一軒宿では珍しいという3種類の泉質が自然湧出。3種は炭酸鉄泉の内湯「常磐の湯」、単純泉の内湯「羽衣の湯」、硫黄泉の露天風呂。常磐の湯は石造り、成分で赤茶けている。羽衣の湯はタイル張り、透明な湯にほんのり湯の花が浮かぶ。浴槽わきの飲泉用の湯口にはシダが生えていた。羽衣の湯の成分表は昭和15年作成、大事に掲げられてきたことがうかがえる。また、壁に手書きの歌詞「不動湯よいとこ」が貼ってあった。9番まであり、温泉の効用を伝える。ガイドブックより詳しいかもしれない。

露天風呂へと続く木造の階段はとても急こう配、隙間だらけで一歩ごとに軋む。湯治のお年寄りは登り降りが大変だろうなと余計な心配をしていると、階段の途中にベンチがあった。配慮が行き届いている。数えたら83段、そこから外に出て谷底まで下ると露天風呂。2、3人でいっぱいの小さな石づくりの湯舟に白く濁った湯があふれる。すぐ脇は砂防ダムがつくられた川、水たまり程度でほとんど流れていなかった。時間だけがゆっくり流れる。辺り一面落ち葉に覆われ茶色一色、白い湯の小さな空間がアクセントになっている。「カサカサ」時折舞う落ち葉の音が静かな山中に響く。素晴らしい秘湯、四季折々に再訪した。




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