鄙びた温泉巡り

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2020/04/19

鄙びた温泉巡り
鄙びた温泉を初めて意識したのは霧積温泉(群馬)だった。霧積は「母さん、僕のあの帽子どうしたんでせうね? ええ、夏、碓氷から霧積へ行く道で谷底へ落したあの麦わら帽子ですよ」から始まる西條八十の詩に登場、森村誠一氏原作の映画「人間の証明」で有名になった。映画クライマックス、母子の深い悲しみを乗せ谷底へ落ちていく麦わら帽子のスローモーションは感動的だった。車の免許取得後初の長距離ドライブ旅行、その感動を乗せて霧積に向かった。約40年前の夏だった。泊まった旅館の部屋の照明は薄暗いオレンジ色でいつまでも目に慣れない。また、水車の回る音や自家発電機の鈍い音も気になって寝付けなかった。いい思い出と言えないが、それが良かった。
その後、つげ義春氏の漫画に出会い鄙びた温泉巡りに拍車が掛かった。木枠が朽ちかけた内風呂、足を入れると沈んでいた落ち葉が舞い上がる露天風呂など、飾らない自然のままの湯を求め全国を旅した。四季折々にあふれる風景、いつまでも浸かっていたい。



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